北部地区医師会病院|沖縄県北部の地域医療支援病院

当院で実施した調査・研究事業

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当院では、地域の保健・医療・福祉を包括する地域医療の発展に寄与できるよう調査研究を実施し、学会発表や講演などを行っています。

2024年度

琉球新報2024年8月21日付・「論壇」コーナーに掲載された「新型コロナ「軽症」で済ますには」に関する投稿記事。

「コロナ対策」:これからも重要なワクチン接種と生活習慣の改善

 北部地区医師会病院 検診科
岸 本 拓 治

 Ⅰ.当院の新型コロナウイルス感染症の特徴

 最近の当院への新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと略)入院患者数は、流行時と変わらないほどに増加しています。過去に当院を受診したコロナ患者の状況を詳しく調査して今後の対策について考えてみたいと思います。

2020年8月10日~2022年12月10日の期間に当院を受診したコロナ患者数は4,899人でした。患者数は、2020年の70人から2021年で891人になり、2022年には3,938人と増加しました。コロナ重症度は「軽症・中等症・重症」に分類されます。受診年別の「中等症または重症」の割合は、2020年34%から2021年39%にやや増加、2022年は7%に減少しました。2020年、2021年、2022年は、それぞれアルファ、デルタ、オミクロン変異株が主に流行しました。オミクロン変異株は感染力が強く、毒性は弱いので、患者数増大と軽症化は主に変異株の変化によるものと思われます。 

Ⅱ.コロナに罹っても入院の必要がない「軽症」で済むためには、ワクチン接種、定期的な運動、慢性肺疾患予防(禁煙が最も有効)が大切

 コロナ重症度は「軽症・中等症・重症」に分類されますが、「軽症」では入院の必要はありません。上記4,899人のうち、健康診査(生活習慣も調べている)を受けた1,353人を対象にコロナ重症度に影響する要因を調査しました。

 【「中等症または重症」になる確率が増加する要因】 ① 性別: 女性に比べて男性は「中等症または重症」になる確率が2.5倍に増加、② 年代: 10〜30代に比べて50代で「中等症または重症」になる確率は4.9倍に、60代で9.7倍に、70歳以上で8.3倍に増加、③ 慢性肺疾患: 慢性肺疾患に罹っていない人に比べて罹っている人は「中等症または重症」になる確率が2.9倍に増加しました。

【「軽症」で済む確率が増加する要因】 ① ワクチン接種回数: 「0回または1回」の人に比べて「2回」の人の「軽症」で済む確率は5倍に、「3回以上」の人は10倍に増加しました、② 定期的な運動習慣: 運動習慣のない人に比べて運動習慣の有る人は「軽症」で済む確率が2倍に増加しました。

 コロナに罹っても入院の必要がない「軽症」で済むためには、ワクチン接種、定期的な運動習慣、慢性肺疾患の予防(禁煙が最も有効)などが重要です。

(調査結果は、医学雑誌「Environmental Health and Preventive Medicine」に発表)

 沖縄タイムス2024年8月1日付・「論壇」コーナーに掲載された「今後の新型コロナ対策:軽症で済むワクチン接種」に関する投稿記事。

今後の新型コロナ対策:軽症で済むワクチン接種

岸本拓治(北部地区医師会病院 検診科)

(1)世界的流行が収まった新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと略) 

 世界保健機関 (WHO) によると2024年3月には全世界でコロナ感染者数は約7憶7千万人、コロナ死亡者数は約700万人に達しました。この間、ワクチン接種の開始、コロナウイルスの変異による弱毒化、有効な治療方法の開発などによって、コロナによる健康問題は軽減しました。2023年5月8日には感染症法上の位置づけが「5類感染症」に変わりました。基本的感染対策の考え方は、 ① 「マスクの着用」は個人の判断に委ねることを基本とし、一定の場合にはマスク着用を推奨、 ② 「手洗い等の手指衛生、換気」は引き続き有効、 ③ 「三蜜の回避、人と人との距離の確保」は流行期において有効、というようになりました。

 (2)今後のコロナ対策で重要なこと

 コロナ重症度は「軽症・中等症・重症」に分類されますが、今後のコロナ対策で重要なことは「コロナに罹っても軽症で済む方法」を身に付けることです。2020年8月~2022年12月の期間に北部地区医師会病院を受診したコロナ患者1,353人を対象にコロナ重症度に影響する要因を調査しました。

 【「中等症または重症」になる確率が増加する要因】

① 性別: 女性に比べて男性は「中等症または重症」になる確率が2.5倍に増加、② 年代: 10〜30代に比べて50代で「中等症または重症」になる確率は4.9倍に、60代で9.7倍に、70歳以上で8.3倍に増加、③ 慢性肺疾患: 慢性肺疾患にかかっていない人に比べてかかっている人は「中等症または重症」になる確率が2.9倍に増加 ― となります。

 【「軽症」で済む要因】

① ワクチン接種回数: 「0回または1回」の人に比べて2回の人の「軽症」で済む確率は5倍、3回以上の人は10倍、② 定期的な運動習慣: 運動習慣のない人に比べて運動習慣のある人は「軽症」で済む確率が2倍 ― でした。

  コロナにかかっても軽症で済むためには、慢性肺疾患の予防(禁煙が最も有効)、ワクチン接種、定期的な運動習慣などが重要です。特に、男性の高齢者は「中等症または重症」になりやすいので、以上の点を実践することが重要です。

2023年度

 琉球新報2024年2月14日付・「ドクターのゆんたくひんたく」コーナーに掲載された「メタボリック症候群の予防」に関する投稿記事。

新聞記事:琉球新報社ニュースサイト←クリックすると表示されます。

 

メタボリック症候群の予防

岸本拓治(北部地区医師会病院 検診科)

全国1位の有病率

 メタボリック症候群(以下、メタボと略)は心臓病や脳卒中などの重篤な病気の原因になります。メタボは内臓脂肪型肥満(内臓脂肪・腹部肥満)に高血糖・高血圧・脂肪異常症のうち2つ以上の症状が一度に出ている状態です。県別メタボの有病率は沖縄県が全国1位の高率を示しています。当院の約4万人の健診データ(2019年度)でも、男性のメタボと診断された率は30%(2018年度の全国値は23%)、女性では13%(2018年度の全国値は7%)と高率でした。

12年間の追跡調査

 2008年度に当院の健診を受けた方々でメタボでなかった勤労者2,781人について、その後12年間にわたってメタボの発生について調査しました。この調査によって、どのような生活習慣があるとメタボを発生しやすいのか、明らかになりました。いろいろの生活習慣のうち統計的に有意な関連性を示した項目は、「間食:朝昼夕の3食以外に間食や甘い飲み物を摂取している」、「早食い:人と比較して食べる速度が速い」、「朝食抜き:朝食を抜くことが週3回以上ある」などでした。ある生活習慣があるとメタボ発生率が何倍になるかを示した指標「ハザード比」は、朝食抜き、早食い、間食などの生活習慣により1.19 ~1.26倍に増えることが明らかになりました(図 1)。「間食」、「早食い」、「朝食抜き」などの生活習慣改善がメタボの予防に重要なことが分かりました。

(調査結果は2022年に医学雑誌「Preventive Medicine Reports」に発表されたものです。
論文のURLは https://doi.org/10.1016/j.pmedr.2022.101995です。)

4つの注意点
1つ目に、毎年の健診でメタボや健康状態を把握しましょう。
2つ目は「間食」です。甘いものに手が伸びそうになったら、砂糖抜きのコーヒーなどを飲んで気を紛らわしましょう。
3つ目は「早食い」です。一口ごとにお箸を置いて30回噛みましょう。よく噛むとインスリン(血糖値を調整するホルモン)が活性化されて高血糖を防ぎ、肥満予防につながります。
4つ目は「朝食抜き」です。朝食は三食の中で最も重要、バランスよく食べましょう。朝食を抜くと、インスリンの効きが悪くなり、高血糖や肥満につながります。

調査研究概要

  1. 調査研究名:沖縄北部における新型コロナウイルス感染症(COVID19)重症度の悪化と生活習慣との関連性:横断研究
  2. 調査研究責任者氏名:岸本拓治
  3. 共同調査研究者氏名:田里大輔、長澤慶尚、諸喜田林
  4. 所属:検診科、呼吸器・感染症科、内分泌代謝科、消化器内科
  5. 調査研究概要:「2008年度から2021年度までの特定健康診査データ」と「当院を受診したCOVID-19患者の診療データ」を連結し、COVID-19重症度の悪化と生活習慣の関連性を明らかにしてCOVID-19重症度の悪化予防に寄与することを目的とした観察的疫学研究(横断研究)
  6. 調査研究の期間:2022年12月~2023年12月
①調査結果の和文概要 ←クリックすると表示されます。
②発表論文のPDF )←クリックすると表示されます。

主な内容

  1. 調査研究の目的
    COVID-19の重症度の悪化は、死亡者数の増加や医療体制ひっ迫を引き起こし、その対策は緊要な課題となっている。そこで、「2008年度から2021年度までの特定健診の既存健診結果データ」と「当院を受診したCOVID-19患者の診療データ」を連結し、COVID-19重症度の悪化と生活習慣の関連性を明らかにする観察的疫学研究(横断研究)を実施して、COVID-19重症度の悪化予防に寄与することが本調査研究の目的です。
  2. 主な調査研究結果
    新型コロナウイルス感染症における重症度の悪化予防として、ワクチン接種、定期的な運動、慢性疾患予防(禁煙が最も有効)が重要であることが示唆されました。(検診科医師 岸本拓治)

2022年度

調査研究概要

  1. 調査研究名:「沖縄県北部の勤労者のライフスタイルとメタボリック症候群の発生率との関連性:コホート研究」
  2. 調査研究責任者氏名:岸本拓治(検診科医師)
  3. 調査研究課題:16年間(2005年度~2020年度)にわたる健康管理センター健診受診者の既存健診結果データ(延べ人数:約85万人)を用いて、沖縄北部医療圏における生活習慣とメタボリック症候群の発生率との関連性を明らかにして、有効なメタボリック症候群対策の樹立を目的とした疫学研究
  4. 調査研究結果:英文医学雑誌 Preventive Medicine Reports 30(2022)101995に発表
①調査結果の和文概要 ←クリックすると表示されます。
②発表論文のPDF ←クリックすると表示されます。

主な内容

  1. 調査研究の目的
    県別メタボリック症候群の有病率は沖縄県が全国一位の高率を示しています。メタボリック症候群は脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な脳血管疾患の原因の一つです。そこで、有効なメタボリック症候群対策を樹立するために、沖縄県北部の勤労者2,781人を対象に生活習慣とメタボリック症候群発生率との関連性について調査いたしました。
  2. 主な調査結果
    生活習慣のうち統計的に有意な関連性を示した項目は、「間食:朝昼夕の3食以外に間食や甘い飲み物を摂取している」、「早食い:人と比較して食べる速度が速い」、「朝食抜き:朝食を抜くことが週3回以上ある」などでした。これらの生活習慣を改善することが、メタボリック症候群の予防につながることが示唆されました。(検診科医師 岸本拓治)

2021年度

調査研究概要

  1. 調査研究名:北部地区医師会病院 健康管理センター・15年間の概況(2005年度~2019年度)
  2. 調査研究責任者氏名:岸本拓治
  3. 所属:検診科
  4. 調査研究課題:健康管理センター15年間(2005年度~2019年度)の活動をまとめ、地域の皆さまに健康管理センターの活動を紹介すること、地域の保健活動の課題を明らかにする資料を作成すること等により地域医療の発展に寄与することを目的とした調査研究
  5. 調査研究の期間:2020年4月~2021年3月
健康管理センター・15年間の概況 )←クリックすると表示されます。

※ダウンロード可能ですが、二次使用する際は健康管理センターまでご連絡ください。

主な内容

  1. 受診者数の推移
    ・2005年度の受診者数は4万人ほどでしたが、受診者数は年々増加傾向を示し、2017年度以降は6万人以上の方々が健康診断を受診しております。
    ・各種の健康診断のうち、事業所健診、住民健診、人間ドックの受診者数が上位を示しました。

    直近5年間の受診者割合は、事業所健診:30%、住民健診:27%、人間ドック:21% でした。
  2. 有所見・服薬・既往歴・生活習慣病からみた受診者の状況
    ・2019年度の健診結果の詳しい分析により、メタボリック症候群該当割合が女性:13%、男性:30%と著しい高値を示しております。
    (厚生労働省が公表している県別のメタボリック症候群該当割合では、沖縄県が最も高い率を示しております。)
    メタボリック症候群の要素である肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症に対する対策が重要な健康課題であると判明しました。
    (検診科医師 岸本拓治)

TEL 0980-54-1111 受付時間 8:30 - 17:00 [ 土・日・祝日除く ]

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