当院では、がんや感染、栄養をはじめとする幅広い領域の知識や認定・専門資格を持つ、頼りになる先輩薬剤師が所属しています。
その人らしく治療が受けられるために がん専門薬剤師 - 木村麻紀子
がん専門薬剤師とは、薬剤師の職能を活かし、がん薬物療法の専門家として最適かつ安全な薬物療法を提供することのできる薬剤師です。 患者さんや家族が、がん薬物療法の必要性と期待される効果、また副作用や環境管理等について十分に理解し、その上で治療意思を決定する支援を行っています。治療や副作用の説明に限らず、 がん患者さんがその人らしく治療を受けることが出来るように支援 を行います。
治療前には、患者さんに合った抗がん剤の選択、投与量やスケジュール管理がなされているか検討し、疑義のある場合には医師と協議し必要な調節を行います。予想される副作用について十分な対策を準備し、個々に応じた最適な治療が受けれるように環境を整えます。治療中は継続的に自ら副作用の聞き取りを行い、状態の変化や状況の把握に努めています。
得られた情報を元に、症状や状態に合わせた薬物療法の提案を行い、治療継続の支援を図ります。
この他に、抗がん剤や分子標的治療薬などを厳正に管理する役割もあります。使用方法や取扱いに十分注意を要するため、こうした知識を医療スタッフや患者、その介護者に伝え指導する役割も担っています。こうして、安全ながん薬物療法の質がより向上し、患者さんの利益をもたらすことが出来るように努めています。
資格を取って良かったこと、やりがいはどういった所で感じますか?
資格取得後は、がん薬物療法に携わる薬剤師としての責任感がより一層高まりました。
がん専門薬剤師に対する活躍への期待と、それに応える使命を担っていると感じています。臨床現場においては、医師よりがん専門薬剤師としての薬学的見解を求められるケースが非常に多いです。
例えば、腎機能障害等を併存し投与量調節が必要な症例、標準的な副作用対策を行っても管理に難渋する症例などです。ガイドラインや文献等を参考に検討することはもちろんですが、これまでに得た知識や経験をもとに、個々の患者背景に合わせた処方提案を行います。
医師と協議を重ね治療選択や投薬設計に反映した結果、がん薬物療法の質向上に繋がり、患者さんの治療に貢献できた時は非常にやりがいを感じます。
また、看護師からもアドヒアランス向上や副作用軽減について相談を受けることが多く、相互に連携し支援することで治療継続に繋がることを多く経験しています。
チーム医療のなかで、がん薬物療法の専門家として存在感のある介入を行い、治療に貢献することがやりがいになると感じています。
がん薬物療法は、治癒を目標にした補助療法、延命を目的にした再発治療、それらと併せて行う疼痛治療があります。いずれにおいても、多くの患者さんは大きな不安や様々な悩みを抱えています。がん専門薬剤師は薬のみを通じ患者さんをみていては役不足です。
しかし、信頼関係なくしては患者さんの想いを聴くことも寄り添うこともできないと思います。 治療が始まれば一貫して支援していくこと、支援する薬剤師がいると示すことが大切 だと感じています。そうした介入を通じ少しずつ信頼を得て、 患者さんの想いや価値観を汲み、よりその人らしいがん薬物療法を提供 することが一番のやりがいだと感じています。
治療が早期に完了できるよう支援
感染制御認定薬剤師とは、感染制御に関わる、抗菌薬及び消毒薬、微生物(耐性菌)に関する専門的な知識及び施設内の感染対策についてエビデンスに基づき情報提供(薬学的管理)できる薬剤師を評価する為に与えられる資格です。
活動内容としては、抗菌薬及び消毒薬の適正使用の管理(抗菌薬、消毒薬サーベイランス、特定抗菌薬使用状況把握、各薬剤の投与量・TDMマニュアル整備等)と院内感染対策を行っております。院外活動としては県病院薬剤師会の感染症分科会に所属し勉強会の企画(演者)や共同研究、感染対策についての意見交換の実施や地域の薬剤師会での講演を行っています。
感染制御認定薬剤師としてICT(感染対策チーム)に所属し、感染ラウンド等で多職種と連携し、主に抗菌薬や消毒薬の適正使用を支援し、薬学的管理が図られているか共同でおこなっています。 医師と薬剤師間で薬剤の投与方法に関して相違があった際、直接薬剤部まで医師の方から足を運んで頂き、顔を突き合わせ議論し考えを共有、修正できました。当院の医師はメディカルスタッフを尊重し、患者さんをチームで支えているのだと感じさせてくれます。
資格を取って良かった時、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
感染制御認定薬剤師を取得した頃は、他の専門領域に比べ認知が低かったように感じますが、近年抗菌薬の不適切な使用を背景として世界中で薬剤耐性菌が増加する一方、新たな抗菌薬開発は減少傾向にあり国際社会でも大きな課題となっています。
これを受け我が国では2016年に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが公表され、2018年度診療報酬改定では抗菌薬適正使用支援加算が新設されました。 当院ではまだ新設加算は取得しておりませんが、将来の取得に向けAST(抗菌薬適正支援チーム)が立ち上がりました。
その中で 患者さんに対して薬物の有効性と安全性を確保し早期に治療が完了(標準的な医療の提供)できるよう支援できたら嬉しくやりがいがあるなと感じています。
専門的な知識と経験で患者さんの治療にあたる
抗菌化学療法認定薬剤師は、臨床薬剤師の中でも、特に感染症に特化したエキスパートを目指す資格になります。経験年数はあまり関係ありませんが、資格に必要な単位を取得していくうちに3~5年ほどかかるように作られています。
医師・検査技師・看護師など他種職の人達と一緒に協力して患者さんの感染症の治療にあたり、抗菌薬の選択、副作用の回避など、特に 薬に対して力を入れて自分の力を発揮する という役割になります。
現在は、薬局業務と病棟業務を行いつつ、ICTやASTのチーム医療活動として、カンファレンスへの参加、感染症ラウンド、抗菌薬適正使用研修会の講師などを行っています。
資格を取得しようと思ったきっかけ、取得してよかったことは?
どの診療科でも、感染症で入院している患者さんは病棟にいらっしゃるので、病棟に行く以上 抗菌薬についての知識を高める必要がある とずっと考えていました。また、自分の指導に当たってくれた薬剤師の先輩方が、感染症に詳しく、感染症治療の面白さを教えてもらったこともあり、自分も挑戦したいと思ったことがきっかけとなりました。
資格を取得したことで、医師への抗菌薬の提案などに自信が持てるようになりました。また、患者さんの訴えや検査結果、CT画像から症状の変化にも気付けるようになり、臨床力がアップしたことを実感しています。
急性期の病院だけでなくリハビリ専門の病院でも資格を活かせることはできますが、重篤な患者さんの治療にあたり、患者さんの容態が改善していくという点でやりがいを感じています。
退院後の栄養管理改善へ
NSTは、個々の患者さんに応じた最適な栄養療法を提供するため、医師、薬剤師、栄養管理士等が、各々の専門的な知識・技能を活かしながら、多角的な視野から栄養サポートを実践するチームです。
そのなかで、薬剤師は対象患者さんが使用している注射・内服薬を把握し、薬物療法の観点から栄養療法に関わっていきます。
主に、EN・PPN/TPN(結腸・末梢静脈・中心静脈栄養)における処方計画の支援を行います。また、輸液の内容や投与量、カロリーの内容が適切かどうか確認します。食事や栄養剤を摂取されている場合は、その合計も合わせて必要栄養量を充足しているか確認します。
資格を取って良かった時、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
NSTは、いろんな職種が関わるので、情報を共有し発生している問題点について各専門分野の知識を活かして検討・評価・対策を行います。それによって、処方内容が変更されたり、患者さんの状態が上向いていくのを間近で見ることができた時に大きな達成感や喜びを感じます。例え短期の入院であっても、その際に その患者さんに最適な食事や栄養補給方法を提供する ことは、退院後の食生活や栄養管理の改善につながります。